~布地の色や柄を変更して再利用を可能にする技術~

ポリエステル布脱色技術『ネオクロマト加工』

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ポリエステル布脱色技術『ネオクロマト加工』

『ネオクロマト加工』は、エレファンテック株式会社と日華化学株式会社が共同開発した 服の布地の色や柄の変更による再利用を可能にするポリエステル布脱色技術です。

環境負荷が高い繊維産業ですが、その中でもポリエステルは52%※1を占める(2019年)、最も広く使われている材料です。
そのうちリサイクルポリエステルの割合は14%まで上昇してきましたが、その大半はペットボトルなど無着色かつ異分野の素材から生産されています。服から服へのリサイクルを阻んでいる大きな原因の一つは、ポリエステル繊維の脱色が難しいことなのです。

『ネオクロマト加工』の特長
・分散染料によって染色したポリエステル布であれば脱色が可能(染色・捺染・昇華転写等対応可能)
・水を使わないプロセスによる脱色が可能
・脱色後(溶剤除去工程含む)の布地にすぐにプリントや染色ができ、色柄の変更が何度でも可能
・別製品の製造工程で生成される廃棄物から作った溶剤を使用
・競合プロセス※2に比べて溶剤使用量は少ない(処理対象重量と同程度) 回収、再利用も可能

※1 Textile Exchange Preferred Fiber & Materials Market Report 2020

※2 ケミカルリサイクル時に脱色する方法1種と溶剤の蒸気を当てて脱色する方法2種と比較。



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リサイクルする前に服や布を再利用するための技術

ネオクロマト加工は、ポリエステル製の服の色や柄を何度でも変えられる新しい再利用技術です。服などの縫製品を粉砕したり、薬品に溶かしてリサイクルする前に新しい用途を作ることで製品寿命を延ばし、環境負荷を削減することができます。
CO2発生量も、溶剤に溶かしてリサイクルポリエステルを作るケミカルリサイクル(-20%)に比較して柄を変えて服を再生する場合は-48%※3と大幅に削減することが可能です。糸から布を作り縫製する工程を通さずに、服の形のまま再生できることは、製品の価値をより長く維持することができ、CO2の削減効果も高まります。  

本技術は、ポリエステル生地を染めている分散染料を高温の溶剤で抽出し、同時に紙に吸い取ることで水を一切使わない脱色を実現させています。また、分散染料や溶剤が吸着した吸い取り紙は燃えるゴミとして処理ができ、水の利用や排水による水質汚染を最小限に抑えることができます。ネオクロマト加工はそのプロセスにおいても、生物多様性に寄与できるサステナブルな技術です。



※3 エレファンテック調べ ネオクロマト加工において、溶剤と紙を使い捨てにするものとして計算した

 

 

開発者からのコメント

【日華化学】
エレファンテックの杉本雅明副社長が弊社研究開発拠点「NICCA イノベーションセンター」で行ったレクチャーに触発されて、社内で自発的なものづくりの部外活動「MO-SO(妄想)ミーティング」が生まれました。本技術は、そのMO-SO活動で発見した文字や絵柄をぼかして識別不能にする実験を、杉本さんや鷺森さんたちが面白いと注目してくれたことから始まりました。実用化の検討では、ジャパンポリマーク株式会社(本社:福井県福井市、取締役社長:久保 浩章氏)の協力を得ました。落ちないはずの分散染料が染み出し、ペーパークロマトグラフィーのように移ってゆく不思議な現象から『ネオクロマト加工』と名付けました。廃棄されている繊維製品をアップサイクルして減らしたい、それもできるだけ水を使わない方法で、という想いが世界に伝わっていくことを願っています。

【エレファンテック】
本技術は、アーティストの鷺森アグリさんとプロジェクトについて構想している際に、「TOKYO2020が延期になりTOKYO2021になった場合、ファッション分野で衣服の大量廃棄が出るかもしれず、なんとかアップサイクルする技術を作らなければならないのではないか」と気づいたのがきっかけで生まれました。実際は、2021年にTOKYO2020と言う形で開催されたのでそのような廃棄物は発生せず安堵しましたが、根本的な課題として多くの回数が着られることなく捨てられてしまう服が多いということを知り、技術を完成させるべく多くの関係者と試行錯誤を続けました。最終的には、一見魔法と見紛うような、何度でもプリントを消せて、何度でも印刷しなおせる技術が完成しました。
この『ネオクロマト加工』を多くの人と一緒に使いこなして、環境負荷を抑えながらファッションを楽しむ時代をつくることに貢献していきたいと思います。

今後の展望

『ネオクロマト加工』に必要な設備は、ヒートプレスマシンのみです。(あるいは手先がとても器用な人ならアイロンでも加工可能かもしれません。)加えて、当て紙と加工液があれば、水を使わないポリエステル生地の抜染が可能になります。制約条件としては、布の生地の種類ごと、染料の量の違いなどに合わせて当て紙の種類や枚数、加工温度などのいくつかのパラメーターをチューニングする必要があります。『ネオクロマト加工』を速やかにユーザーの皆様に活用いただくために、カスタマーの皆様に伴走する形でサーキュラーエコノミーに向けたPoC(Proof of concept)プロジェクトをご提案させていただくところから始める予定です。

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